大和に泊まろう

見ると恥ずかしい気持ちになると思います。

2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

紅い彼と蒼い私(19)

紅い瞳の彼の顔はよく覚えている. さっきすれ違ったときにも会ったし,私の夢の中に出てくる青年だ. しかし,前は黒い瞳だったし,そもそもなぜ翼なんて生えているのだろうか. 玉座に向かおうとしたが私の興味は彼に向かっていた. 無我夢中で彼の後を追…

紅い彼と蒼い私(18)

体の奥底から力を感じる.魔力が何倍にも倍増された感じがする. しかし,身体に変化が起きた.背中に何か違和感を感じる. どうやら翼が生えてきたようだ. また,頭の中に自分の知らない魔法や記憶が流れ込んでくる. これは魔人の記憶だろうか. 僕は身体…

紅い彼と蒼い私(17)

焦げた匂いに交ざって腐敗したような臭いが地下牢に漂っている. 入り口には魔封じの札が立てかけられているはずだがばらばらになって入り口付近に焼き焦げて残っていた.. どうやら札を壊した奴がいたらしい. 私は地下牢を去り,再び玉座に向かった. 突…

紅い彼と蒼い私(16)

魔人に魂を渡す.即ち契約を交わし魔人の力を一部もらい受ける. つまり半魔人になるということである.僕は迷ってしまった. 魔法学校で学んだことがある.魂を渡したものは呪われてしまうと. しかし,魔人を助けろという言葉が脳内に響き渡り僕は契約を結…

紅い彼と蒼い私(15)

玉座を後にし,門の近くまで来た時に異変が起きた. 地下の方で爆発魔法を用いたような音が聞こえたのだ. 慌てふためく兵士とともに私は地下牢へ向かう. 道中,この国には珍しい黒い瞳の青年を見かけたような気がするが今はそれどころではない. 地下牢に…

紅い彼と蒼い私(14)

僕は目を疑った. 兵士たちが探している魔人が跪いていることに. そして,彼は僕にもう長くないことを伝えてきた. どうやら魔力がほとんど残っていないらしい. 目の前に困っている人がいるときは助けてあげろ. 昔,祖母に言われた言葉である. 僕は彼に…

紅い彼と蒼い私(13)

玉座の前で私は王の言葉に耳を傾けた. 王がいうには単独で北雪原に現れた魔人の調査をしてほしいそうだ. しかし,私は違和感を感じた. なぜなら,魔物類の調査は王直近の学者が行っており一人では行わないからだ. どうやら王様は本気で私の一族を見捨て…

紅い彼と蒼い私(12)

魔人の身長は僕の二倍近くあるだろうか? まがまがしい角に褐色の肌,赤い目がよく似合っている. 感心している場合ではない. 早くこの場から逃げなければ. しかし,魔人の力によるものか金縛りにあったように動けない. ここで死ぬのか,その刹那,僕に魔…

紅い彼と蒼い私(11)

私は王の部屋で扉が開かれるのを待っていた. 兵士は何やら落ち着いていない様子である. どうやら北雪原から突如として現れた魔人を牢獄へ閉じ込めたらしい. その様子を観察しているうちに扉が開いた. 玉座には白いひげを生やした王がこちらを見ている. …

紅い彼と蒼い私(10)

牢の外に出てみると何やら外が騒がしい. 僕は兵士の話を箱の中に隠れながら聞き耳を立てていた. どうやら場内に閉じ込められていた魔人が脱獄を図ったようだ. 警備が手薄だった理由を理解し,その場を立ち去ろうとした. しかし,運命というのは時に残酷…

紅い彼と蒼い私(9)

祖国は昔,他国とも友好な関係を築いていたようだ. しかしながら先代の時代から,他の領地を奪うことで国政を盛んにしている. 私のご先祖は代々この土地を守る名家であった. しかし,名家の出である私たちが迫害を受け始めたのは最近になってからだ. 王…

紅い彼と蒼い私(8)

青年は初老の男に何かを話していたようだった. うまく聞き取れなかったが何か怒っている様子であった. 初老の男は牢獄から出してもらったようだ. 男は僕の目の前でよろけた...ように見えた. 青年に悟られぬようこちらに鍵をよこした. 何者なのか謎は深…

紅い彼と蒼い私(7)

東の青々とした広い丘から運ばれてくる穏やかな風が城の旗を大きく揺らす. 何人たりとも通さないと感じさせる鉄壁の白い壁. 城の周りには水が張られており馬を使って攻め込むことは困難だろう. 門兵に挨拶をし,王に謁見する旨を伝えた. 玉座に続く通路…

紅い彼と蒼い私(6)

目を覚ますと僕は地下牢に閉じ込められていた. 腕には鎖がついていて逃げられない. 右隣の部屋からは呻き声,左隣の部屋は初老の男が何かを待つようにじっと座っていた. 側をネズミが走る. 格子に向かうネズミを目で追いかけると,鉄の鎧を着た青年が歩…

紅い彼と蒼い私(5)

私は風の街からきている商人のところで林檎を買う. 「いつもの用意してるよ.ソウリュウ・ウィンター」 真っ赤に熟れた林檎が甘美な香りを漂わせながらこちらを見てくる. 代々ウィンター家は林檎に目がなく,食べないと一日が始まった気がしない. 挨拶を…

変な小説を書く彼と辟易する私

読もうと思っても読み進められない、謎の重さを感じる文章ですよね。 怖くなってくると思いますがここはグッと堪えて。それでもキツければ、無理せずブラウザを閉じるように。

紅い彼と蒼い私(4)

僕の名前はグレン・ナツ.最近不思議なことが起こる. 目を覚ますと傷だらけになっている. ここのところ記憶が断片的であるのだ. 不思議に思いながらも僕は魔法学校で研究する. 友達にはよくからかわれるが僕にはよくわからない. 学校帰り,晩御飯のこと…

紅い彼と蒼い私(3)

騎士としての朝は早い.毎朝,私は素振りをして心を落ち着かせる. 千回振り終えたあとは決まって風呂場で汗を流す. 今日は王様から城に呼ばれている. 最近,城下町の外に出没する魔物のことだろうか. そんなことを考えながら,先代より譲り受けた少しさ…

紅い彼と蒼い私(2)

始まりはたまにしかやって来ない.僕はまた彼女に救われる. 手を伸ばした先に待ち受ける彼女の手をつかみたくはない.物語が始まらないように. 「まだだ...」 瞼をそっと閉じた後,思いを胸に秘める.僕はいつもこの場面で現実に戻る. 必然というものは存…

紅い彼と蒼い私(1)

終わりはいつも突然やってくる.私はまた彼を救えないのか. 手を伸ばせば届くのにその手をつかむことが叶わない.物語はいつもここで終わる. 「まただ...」 瞼をそっと開けると枕がしっとり濡れている.私はいつも同じ夢を見る. 偶然にしてはできすぎてい…

第一希望

「自分に合う大学しか受からない」 お久しぶりです。手越です。 この言葉は,私が大学浪人中に嫌いな講師に言われた言葉です。 今回はこの言葉を中心に記事を書きたいと思います。 この言葉の意味を考える前に,まず私の人生に関して話す必要があります。 こ…

日常に潜む非日常

カーテンの隙間から覗く神をも思わせるまばゆい光とともに私は目覚めた. 時刻は八時,始業のチャイムにはまだ間に合う.私はパンをトースターに入れて制服に袖を通した. 「まだだ...」秒針を噛み,音が鳴るその刹那勢いよく家を飛び出た. そこの曲がり角…